※この記事の情報は2018年1月9月時点のものです。
iPS細胞の研究が進んで、体のいろんな部位の再生が現実的になってきていますね。
歯なんかはもう実現しているとか・・・。
部位の構造の複雑さによって、研究の進み具合が違っていますが
その中でも腎臓は構造が特に複雑で、まだ実用化には時間がかかるようです。
iPS細胞の腎臓への応用で期待されているのが、慢性腎不全の患者への腎臓再生・腎臓移植です。
このうち、腎臓再生のほうは5~10年を目安に実現されるだろうということが
日経新聞に載っていました。
腎臓再生・腎臓移植のそれぞれの特徴を簡単に紹介します。
参考にしたオンライン資料は最後にURLをまとめて載せています。
~はじめに~ 腎臓の働きって?
たぶんこのページに訪れる人はすでにご存じかと思いますが
腎臓の機能って複数あるので、ここでおさらいしておきます。
腎臓の機能は主に3つあります。
〇不要物の排出
体内で過剰な塩分・水分・たんぱく質が代謝されたときにできた尿毒素を排出する。
〇血液中の濃度を一定に保つ
必要な栄養をとっておくことで、血液中のカリウム・塩分の濃度を一定に保つ。
〇ホルモン生成
血液・カルシウム生成、血圧調整のためのホルモンを生成する。
どの機能も欠かせないですが、血液中の濃度を一定に保つ機能は超正確で
ph(酸やアルカリ濃度を示す値)は常に7.4に保たれています。
腎臓再生はネフロンの再生で実現が近い!
iPS細胞による再生医療は大きくわけて二つあり
①細胞を置き換える
②臓器をまるごと置き換える
方法があります。
腎臓にはネフロンという尿をろ過する構造体があり
これが左右の腎臓の中に約200万個存在しているんだとか。
そのネフロンを、iPS細胞由来のネフロンに置き換える・・・つまり移植する
というのが①の方法になるようです。
②は、腎臓をまるごとiPS細胞からつくって移植するやり方ですが
腎臓の構造はとても複雑なのでまだまだ厳しいのですね。
ネフロンと、腎臓をかたち作る血管は発生の由来が異なるため
まるまる腎臓をつくり移植する・・・というのはまだいつ実現するかわからないのです。
(後述しますが、東京慈恵会大学が現在
動物が腎臓を発生させる過程を利用して腎臓をまるごとつくろうとしていて
そちらがうまくいけばネフロンと血管の発生由来が違って複雑でも
すべての機能を持った患者の細胞の腎臓がつくれます)
ネフロンを移植するやり方でしたら、慶応義塾大学医学部長の
岡野栄之さんがいうには5~10年で実現するそうなので
それが実現すれば「尿のろ過」機能が回復できるわけです。
これはかなり明るい光ですね。
iPS細胞からネフロンなり作るときは、動物の体内で患者のiPS細胞から作っているので
「動物の細胞が残らないか」
「病気が移らないか」
といった問題をしっかりクリアしてから実用しないといけません。
だから早ければ患者にとっていいかというと・・・必ずしもそうではないのではないでしょうか。
腎臓移植の実用化はいつごろ?
一方で、腎臓移植、腎臓をまるごとつくり移植する方法は
前述したとおりかなり難しい技術です。
文部科学省にiPS細胞研究についてのロードマップが2015年11月に作成されていました。
それを見ると、だいたい2020年に前臨床研究が始まり
2025年に臨床応用が始まる、という予定なようです。
(予定というより目標ですが・・・)
なので、うまくいって一番早くて2025年?
またUp Date Nephrology(東京慈恵会医科大学)のレポートでは
iPS細胞の腎臓への臨床研究が早くて2022年に始まるだろうとあります。
あ、ちなみに
臨床研究は、人に対して行われる医学研究で
臨床応用は、人の治療に応用する
という意味です。
文部科学省のロードマップと東京慈恵会大学のレポートを総括してみると・・・
腎臓移植(まるごとつくって移植する)の臨床研究は2020~2022年頃に始まり
実用化は一番早くて2025年ということになるようです。
現在たくさんの研究チームが、腎臓が発生する道すじを解読するために
暗号を一つ一つ発表しているのですが
東京慈恵会大学はこうしたプロセスを踏むことなく
動物の胎児が一から腎臓を成長させる力を借りて腎臓をつくろうとしています。
動物の胎児の腎臓の核に、患者のiPS細胞をいれ移植用の腎臓をつくる。
ただこの実験、動物とヒトの細胞を合わせいわゆる
「キメラ」を作る研究ですので、日本では許可されていないのだと。
日本の研究者も規制のゆるい米などでこの研究をしていますね。
動物の細胞自体は、特殊な薬を注入することで消失するんだとか。
もうほんと、こういう一つ一つの技術を開発する人ってスゴイ。
尿のろ過機能を持った腎臓の再生技術の実用化は早くてあと5年くらい
というのが、思ったより早くて期待できそうです。
【参考した資料はこちら】
もっと知識を深めたい方は日本透析医学会のHPを見てみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。